歯の生え替わり

子どもの乳歯を、虫歯やケガなどが原因でやむを得ず抜歯をしたときは、保隙装置を使用しなければなりません。
永久歯に生え変わる乳歯ですが、本来の役目を果たさずに抜けてしまうとさまざまな問題が起きてしまうのです。
保隙装置を使わないとどうなってしまうのかを理解したうえで、必要となる治療を受けさせましょう。保隙装置とひとくちにいっても種類はさまざまです。
子供の歯である乳歯は、生えてくる順番や抜け落ちる順番というのが決まっています。
いずれはすべて大人の歯である永久歯に生え代わるのですが、順番が狂ってしまうと、歯列不正などのトラブルを引き起こします。
何らかの理由で入試が早期に抜けた場合に利用するのが「保隙装置(ほげきそうち)」と呼ばれる器具です。

ただし、通常の生え変わりによって自然に乳歯が抜け落ちた場合には、保隙装置を使う必要はありません。
生えているべき乳歯を失ってから、永久歯が生えてくるまでに半年以上かかると予想される場合には、保隙装置を付ける事をおすすめします。

ここでは保隙装置について詳しく解説します。

保隙装置ってなに?

保隙装置とは、「隙間(すきま)を保つ」ための装置です。そこで気になるのが、なぜ隙間を保つ必要があるかですよね。

乳歯が予定よりも早く抜け落ちてしまった際に用いられるものですので小児歯科で活用されています。

歯は隙間を埋める性質がある

私たちの歯は、歯列の中に隙間ができると、そこを埋めようと動く性質があります。
両隣の歯は、隙間へと倒れ込み、もともと噛み合っていた反対側の歯は、隙間に向かって伸びていきます。
これが乳歯から永久歯に生え代わる時期に起きてしまうと、あとから生えてくる永久歯のスペースがなくなり、歯列不正を起こします。

どんな歯列不正が起こるの?

乳歯が抜け落ちたあとの隙間は、放置することで徐々に狭まります。
その結果、下に控えている永久歯が正常に生えることができず、歯列からはみ出す形で生えてくることがあります。乱ぐい歯や八重歯、出っ歯などが起こります。
また、早い時期に抜け落ちた乳歯に対して、保隙装置を用いず放置すると、永久歯が全く生えてこない場合もありますので注意が必要です。

このように、乳歯の早期脱落に対しては、保隙装置による治療が必要となるケースが多いです。
乳歯が抜け落ちても「いずれ永久歯が生えてくるから」と油断していると、隙間が閉鎖して、上述したような歯並びのトラブルを引き起こすことがありますので要注意です。
お子さまの歯の生え代わりで気になる点が出てきたら、すぐに来院して下さい。それが正常なのか異常なのかを診断します。

歯の叢生

主な保隙装置の種類

保隙装置といっても、種類はさまざまです。失った乳歯の場所や本数などによって使い分けなければなりません。
保隙装置の治療にはもともと保険を適用できませんでしたが、2016年度から保険が使えるようになりました。
ただし、残っている乳歯が装置の支えとなることや6歳臼歯は支えとしないことなど、条件はいくつかあるので注意が必要です。

バンドループ

乳歯がなくなってできた空間を維持するために、歯にバンドを巻いてそこにループを取りつけます。太いワイヤーで歯を支えることによって、あいてしまったスペースに倒れ込んでしまうのを防ぐのです。
このようにして確保した場所に永久歯が正常に生えてきたらバンドループは取り外します。

乳歯

クラウンループ

作りはバンドループと似たものです。バンドループが支えとなる歯にバンドを巻きつけるのに対して、クラウンループは乳歯冠を被せることで支えとします。歯が欠けた部分をループで保つ仕組みは同じです。虫食いなど、さまざまな事情でバンドが巻けない歯の場合は、こちらを使用します。

ディスタルシュー

乳歯のなかで一番奥に生えている第二乳臼歯を失った場合に、第二乳臼歯のさらに奥から生えてくる6歳臼歯と呼ばれる第一大臼歯の位置を誘導するために使用する装置です。
第一大臼歯が前に傾いて生えてくるのを防ぎ、正常に出てこられるように、かぎ状に先端が曲がった装置をつけておくのです。

リンガルアーチ

リンガルアーチは舌側弧線装置ともいわれます。奥歯にバンドを取りつけて歯の裏側に太い針金を通し、バネをつけて歯を動かしていきます。歯の裏側につけるため、基本的に外側からは見えないようになっています。完全に固定されるため、自由に着脱はできません。

小児義歯

自分で簡単につけ外しのできる子ども用の義歯(入れ歯)を入れて、失った乳歯の代わりとします。食べ物を噛む機能を補えるのがほかの保隙装置とは大きく違う点です。子ども用の義歯は、前歯用と奥歯用に分かれます。

歯並びをよくするための装置ではない

保隙装置は、乳歯がなくなったことが原因で永久歯の歯並びが乱れるのを防ぐために使うものです。矯正治療のように歯並びをよくする目的で使用するものではありません。
ですから、保隙装置を使って確保していたスペースに永久歯が生えてきたら装置は外さなければなりません。

最後に

永久歯が正常に生えるために必要な保隙装置ですが、あまり長い期間つけたままでいると、顎の成長に悪影響を及ぼす可能性があるので気をつけなければなりません。永久歯が生えてきたら、装置は外しましょう。
また、装置をつけていることで歯に汚れが溜まりやすいうえに、歯みがきが上手にできなくなるので虫歯になるリスクが高まります。保隙装置をつけている間は、メンテナンスをかねて歯医者さんの診療を定期的に受けるよう心がけてください。生えかわりの時期がくる前になんらかの理由により乳歯が抜けてしまったら、そのままにしておいてはいけません。あいたスペースにまわりの歯が倒れてくるなどして、永久歯が生えてくるべき場所が奪われてしまいます。結果、永久歯の歯並びが悪くなってしまう可能性が高まるのです。
存在するべき乳歯が失われた場合には、小児歯科や矯正歯科で処置を受けるようにしてください。適切な処置を施さないと後悔することになってしまいますよ。

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