投稿日:2021年9月19日 | 最終更新日:2023年12月14日
舌小帯短縮症とは?
舌小帯(ぜっしょうたい)というのは舌の下面と、下の前歯の付け根に通じる粘膜で、この小帯が短かったり舌の先端までついていたりするのを舌小帯短縮症(舌小帯萎縮症、舌強直症)といいます。
舌小帯強直症は、舌小帯(ぜっしょうたい)の短縮により舌の運動が制限され、その程度にもよりますが、授乳困難、発音障害(特にラ行、タ行、サ行)、舌突出癖(舌の動きが影響し歯並びにに問題を生じる)、咀嚼障害などの原因になるといわれています。
舌小帯強直症のために、ミルクを上手に吸えず、体重が思うように増えない場合は、生後間もない頃、あまり小帯の感覚もない時期に、無麻酔で切ることもあります。
そうでない場合は、4~5歳ごろまで経過観察を行い、その頃になっても舌を上に上げられず、舌の先が上顎の切歯まで到達できない、あるいは下顎の切歯よりも前に出せない、場合などは発音や構音の障害(いわゆるしゃべり方がおかしい)になるような時は、処置を考えた方がよいでしょう。
その際の術式自体は局所麻酔をして治療ができるお子さんなら比較的簡単に受けられる程度の治療です。
切除術を行う場合、ただ単に切除するのではなく、術前、術後に舌を挙上する訓練の指導を行わないと舌小帯切除後の瘢痕治癒、舌を挙上する力、発音等に良い影響が現れないことが多いとされていますので、当院では、舌小帯の処置をされた方には、舌のトレーニングを行っています。
舌小帯短縮症について
舌小帯短縮症(俗称、つれ舌)または舌癒着症は、舌の裏側にある膜状の組織が舌の先から歯茎に伸びているために舌の動きが制限される先天性の異常です(写真1)。そのため赤ちゃんの時期に哺乳が上手にできなかったり、3~5歳になって発音がはっきりしなかったりします。
症状について
浅飲み
赤ちゃんの乳房への吸い付きが浅い。
眠り飲み
吸い付きが弱いため、哺乳不十分のまま疲れて眠ってしまう。
体重が増えない
哺乳量が不十分の可能性があります。
乳首が痛い
舌で吸えないため歯茎で乳首を噛まれるためです。
乳房がしこって痛い
哺乳力が弱く乳管が詰まりやすいためです。
舌先がハート型になる
舌足らず
舌先を使う「ら行」「さ行」「た行」などの発音が不明瞭です。
親も子どもの時に舌小帯を切った
遺伝性があります。
アイスクリームを舐められない
舌を長く出せないばかりか、舌先を持ち上げることができないためです
このような短い舌小帯は歯並びなどにも影響を及ぼします。
おもな症状は
①舌が上がらないためタ行やラ行が発音しにくい。
②口呼吸になりやすい。
③かみ合わせが受け口になりやすい。
④上の歯の歯並びが悪くなる。
↑この④は舌が上あごに押しあてられないことで上あごが狭くなり、歯が並びきらなくなってガタガタとした歯並びになるということです。
舌小帯短縮症の治療の是非をめぐる歴史
舌小帯切開は古くから行われている手術です。
ところが日本では1980年頃から小児科学会は舌小帯切開に反対でした。これは哺乳に対しての見解です。
しかし2000年代になって、それまでミルクが主流だった欧米で母乳栄養の重要性が唱えられるようになり、「舌小帯切開術は哺乳障害を改善する可能性がある。」という研究論文が数多く発表されるようになりました。2009年に、WHOの「乳幼児の授乳~教科書のモデル・チャプター」にも「舌小帯短縮症が哺乳障害の原因になっている場合には、舌小帯切開を行う医療機関に患児を紹介する必要がある。」と記載されました。
また2017年に、米国小児科学会が、「母乳栄養に優しい小児科外来の指針」を報告しましたが、そこには「舌小帯や上唇小帯の切開は吸啜(きゅうてつ)、授乳、哺乳量を改善する可能性がある。地域の母乳栄養相談員や小児科医が必要と判断したら、切開の経験をもつ医師に迅速に紹介すべきである。」と書かれています。
そのような状況下で日本歯科医学会が2018年5月に舌小帯短縮症に対する治療指針を打ち出しました。これは歯科に「口腔機能発達不全症」という新しい病名が厚生労働省より認可されたことへの対応です。
「口腔機能発達不全症」評価マニュアルでは「保護者・保育関係者は子どもの舌がハート形ではないかをチェックし、歯科医は舌小帯の異常をチェックすべき」としています。そして対応策としては「哺乳障害、摂食障害、発音障害がある場合は、切除術を行う」ことを推奨しています。
舌小帯短縮症は歯列不正を引き起こす原因となります。その為異常があれば4~6才頃には切除した方がいいケースが多いです。